6.阿蘇における火山博物館の役割
6-1.観光地阿蘇のステ−タス向上
阿蘇はなんといっても草千里ヶ浜〜阿蘇噴火口といったコ−スが観光のメインル−ト
であることに変わりはない。このような場所に文化・観光の拠点があることは今後も
阿蘇の発展に大きく寄与していくものと考えられる。
また、阿蘇火山博物館は今後さらに充実させることのできる可能性を持つ施設である。
日本をはじめ世界に誇る博物館として利用、発展させていけるものと考えられる。
さらには、現在計画が進行中の熊本県立博物館は松橋町に建設されることが決まって
いるが、同館の計画では熊本県内の主要な博物館、資料館とのネットワ−クを強力に推し
進め、熊本県全体として文化の発展に力を入れていこうとしている。そのなかでも地域的
に阿蘇は県として最も力を入れたい部分であるので、県立博物館とのリンクによって
火山博物館の価値も上がると同時に、今後重要な役割を担って行くべき施設になる。
6-2."火山"や"阿蘇"をテ−マとした社会教育,学校教育への活用
これまでの火山博物館の利用者のほとんどは観光客であった。学校教育の中での
利用形態も修学旅行と社会見学が中心で、一般の授業の中での利用はほとんどなかっ
た。これは、立地が観光地であること、民間企業の経営であること等が大きな要因と
考えられる。
道路無料化によって一般の人々や学校関係が阿蘇山上を訪れやすくなった。特に学校
関係においては、今後の"総合的学習"に対して阿蘇の社会教育施設としての役割はよ
り大きなものとなった。
地元の人たちをはじめ一般の人や子供たちに阿蘇の本当のすばらしさを理解して
もらうための情報発信基地として、また阿蘇火山とともに住む住民に「火山との共存」
をより明確に意識してもらうための施設として活用したい。
6-3.文化財、歴史、自然史資料の保存、調査、研究、展示
阿蘇には古くからの古墳や遺跡などが数多くあり、さらにはいくつもの著名な寺社など
多くの文化遺産が存在している。同時に阿蘇中岳の噴火口をはじめとする火山地形や
地質、草原の動植物など豊かな自然素材をも有している。
今後、様々な資料の収集や一般に見せるための展示施設として、そして豊かな自然や
文化に関する調査、研究のための施設として機能できるものと考える。
特に今後阿蘇発展のための大きなポイントのひとつと考えられる古坊中一帯の発掘、
史跡指定、観光への適正な利用などといった展開の中で、古坊中の持つ魅力(阿蘇の
史跡指定、文化と自然が凝縮されている場所として)を周知していく必要があり、その
ための施設としての活用も十分に考えられよう。
6-4.観光の牽引役としての文化施設
一般的に(現在の阿蘇地域もそうであるが)近年の観光地といわれるところにおいては
観光が文化を創ってきたと言えるところも少なくない。しかし、阿蘇においては本来自然や
文化が観光を創ってきたのであり、その本来の姿に戻さなくては「阿蘇」は死んでしまう。
自然や文化主導の阿蘇観光という形態に引き戻すための施設として利用したい。
6-5.阿蘇フィ−ルドミュ−ジアムの拠点として
阿蘇独自の自然や文化に関する調査、研究のための施設としてまた普及施設として、
そして阿蘇全体をフィ−ルドミュ−ジアムと見なしたときの一つの拠点として機能できる
ものと考える。
特に、今後の重要なポイントのひとつと考えられる古坊中一帯の発掘、史跡指定、観光
への適正な利用などといった展開の中で、古坊中の持つ魅力(阿蘇の文化と自然が凝縮
されている場所として)を周知していく場が必要がある。
6-6.火口カメラの有効利用
活動火口を生中継している火口カメラの映像は、当館における展示としての利用の他、
大学との共同研究の素材として、また観測や防災的な観点から気象庁阿蘇山測候所への
無償提供、在熊の各テレビ局へのニュ−スソ−スとしての有償提供などを行っている。
通信技術の向上によって、今後は阿蘇周辺の各行政、文化、観光施設への情報提供な
どさまざまな活用が考えられ、防災的、学術的、観光的観点からの利用価値をより一層
高めることができるものと考えられる。
特に、このところ相次いで発生している地震や火山噴火に対する啓蒙にも大きな役割
を果たすことが期待される。
阿蘇火山博物館の存続に向けて