ペルー日記(2001年1月)

1月28日(出発前夜のメールより)

記憶に残るような大雪に見舞われております。
皆様、いかがお過ごしですか。
いよいよ明日、ペルーへ発つ日がやってきました。早いもので、きっと任期の2年間
もあっという間に過ぎてしまいそうな気がします。
明日はデルタ26便 成田18時発のアトランタ行きにて乗り継ぎ、現地時間29日
早朝、リマに着く予定です。

ちなみにペルーの住所は次のとおりです。
Colegio.HIDEYO NOGUCHI
Av.Sta ANA Lt78
Lot Rust CHACRA CERRO
LIMA-7 PERU
tel 51-1-537-3926 (学校)
tel&fax 51-1-537-3965(自宅)

会津の「ドクターノグチを語り継ぐ会」という民間の団体の交流派遣になります。向
こうで小学1年生から中学5年生まで授業を持ちます。簡単な日本語を教えながら、
スペイン語とペルーの文化を学び、かつてのノグチ博士のような真の国際人を育てる
のが会の主旨。
教える以上に学ぶことのほうが、断然多いとは思いますが、子供たちと一緒に、泣い
たり笑ったり、ゆっくり言葉を覚えながら、それぞれのふるさとのすばらしさを分か
ち合えていけたらいいなと、思っております。

ペルーへ着いたらすぐ、メールは使えるようにするつもりですので、また、お便りさ
せて頂きます。一応このアドレスは明日朝まで、受信できます。
本当に、たくさんの出会いによって生かされてきた自分です。今度は、今までの出会
いすべてを力に、愛する猪苗代とそのゆかりの国と、深く心をこめて関わっていきた
いと願っております。

心からの感謝とともに
愛するふるさとへの想いもともに
行ってまいります。
皆様どうぞ、お元気で
ご健康と幸せを同じ空の下、祈っております。

1月29日 夜

ペルーに着いてようやく迎えた夜。窓から部屋に流れる風が少し、涼しくなって
、 雪の世界から夏のペルーへ、突然放り出された体をほっとさせてくれる。
荷物の中からCDを取り出し、安里勇さんの八重山民謡を聴いている。星野道夫さん
のライナーノーツ欲しさにやっとのことで手に入れ、曲よりも文章を眺めてばかりの
CDだった。今日はじめて、潮に洗われたような彼の歌声が、体にしみいるように流れ
込んできた。
遠い異国のペルーで最初に聴くのに、こんなにぴったりした歌声はないと思うほど。
遠い自然と身近な自然という星野さんの言葉を改めて想う。
ずっと憧れていたアンデスの国。その遠い物語の世界の第一歩を今日、歩んで、今こ
こにいる自分。愛した身近な自然に別れを告げて、でもそれを自分の中に内包しなが
ら、この地の自然や人々に出会うことを望んで、ここへ来た
今日出会った人々、子供たちは、みなそれぞれに美しく、それはやはり違う民族を目
にするときの憧憬であろうか。でも眼差しに誰かの面影を見るように、懐かしさも感
じる。日系の方が多いからだけではないのだろう。はるかな記憶を辿ったとき、どこ
かで結びつく大きな流れがあるのだと想う。
押し寄せる歴史の波にもまれながら、遠い地へやってきた移住者の方々の決意や刻ん
だ足跡を、知っていきたいと思う。身近な人々から。それはいつか、民族、人種、そ
して、人類としての歴史の中の歩みを知る道への扉を開いてくれる気がする。
それにしても、早く言葉を覚えなければ。
気持ちのはやるのに、体がついていけない、今は。でも、目覚めるたびに、新しい日
の来る毎に、着実に歩を刻んでいきたい。
まっすぐな瞳の子供たちと、たくさん仲良しになりたい。いっぱい話がしたい。
歌や踊り、楽器もたくさん覚えよう。そして、美しい日本の歌を、たくさん一緒に歌
おう。
まだまだ始まったばかりだというのに、眠るのが何だかもったいない。静かに高揚す
る想い。でもこの気持ちを、大切に忘れずにいたい。


ペルー日記