ペルー日記(2001年11月)

11月27日

ペルーに来てから、時おり夢にあらわれる友がいます。いつも心で私を支えつづけて
くれた、高木哲也というかけがえのない友が逝って、今日で一年。

2000年11月27日、メキシコにある中米最高峰のオリサバ山へ登山途中
の不慮の出来事でした。

その友とは大学1年のとき、同じ中央大学サイクリング同好会に入ったのがきっかけ
で知合い、卒業後それぞれの場所へ進んだあとも、折あるごとに旅先からの便りなど
が届き、無事を知るとともに、お互いの生き方を報せ、確認しあえる、そんな数少な
い、心をわかちあえる友人でした。世界中を一人でどこでも旅して歩く、タフでごつ
くて強くて激しい外見と、内に秘めた繊細なやさしさ、ひょうきんなユーモアで常に
人を笑わせるサービス精神、そして何より、人のために全力を尽くす、本人は気づい
ていたかどうか、大きな愛をまわりの人たちに与えつづけていた人でした。守るもの
のために命をかける、まさにそういう熱い人間で、目に見えない、けれど一番大切な
のは心だということを、彼自身心に刻んでいたから、それが態度となって顕れ、彼を
知る人たちに、けして消えることのない熱い思いを残していったのでしょう。

そんな彼の生き様を、伝説を、言葉を、軌跡を残そうと、友人有志達によるHPサイト
が間もなく立ち上がりました。 (http://www.takagijiru.com/)

親より先に、旅立ってしまわなければならなかった彼が、命をかけて、残そうとした
もの。それは彼の生き様のなかに顕著にあり、彼を知る人々の心にしかと刻み込まれ
ました。それを語り継ぎ、いつかまた会える日まで、彼に恥じない生き方をすること
を、私たち友はみな、心に誓いました。

真摯に生きた魂の記憶は、残された者の心に本当に強い力とメッセ―ジを残してくれ
ます。そして命は尽きることなく、めぐりつづけるのだと思います。

今は彼の墓前に参ることは叶わないけれど、心から、彼の魂に祈りを捧げたい。

そして、悲しみではなく微笑みとともに、彼の残してくれた大きなやさしさ、全てを
うけいれる深い心、人のために生きる強さを、忘れないでいたい。

日本を守る男になりたいといった彼の志は、私達の心の灯火となって、歩ませつづけ
てくれるはず。

ペルー行きを彼に告げることはできなかったけれど、きっといつでもどこでも守って
くれると、彼の妹さんたちが、彼が最後に身に付けていたコインとポケットサイズの
水筒(お酒を入れるもの)を、送ってくださいました。

いつかそれらと共に、オリサバ山を訪れたいと思います。

そして彼の魂は自由な翼で、日本の家族や世界中の友たちのことを見守っていてくれ
ると信じています。


ペルー日記