九州産業交通への存続の要望書(火山学会)

平成15年9月9日

九州産業交通株式会社 取締役社長 田上 良輔 殿

特定非営利活動法人 日本火山学会

会長 平林 順一

阿蘇火山博物館存続に関する要望書

阿蘇火山博物館は、昭和57年7月に開館し、同年秋には博物館法に基づく「博物館
相当施設」に指定された民営の博物館と認識しています。

 博物館の設置には、観光客に死者3名、重軽傷者11名をだした中岳の昭和54年
の爆発的噴火が契機となったと考えています。事故後、阿蘇火山防災会議協議会並びに
県などによって、火口周辺の安全対策が見直されました。これに呼応して、地元企業で
ある御社は、より安全性の高い草千里ヶ浜火口内に本格的な火山博物館の設立を企画さ
れ、建設されたと理解しています。

博物館は、阿蘇火山をはじめ、世界の火山に関する資料を展示し、火山を総合的に
学習し、理解できるように工夫されています。特に、世界的にも画期的な設備として、博
物館から遠隔操作ができる2台の「火口カメラ」を中岳火口壁に設置されました。この
システムでは、活動が活発な危険な状態でも火山活動の様子や推移を克明かつ安全に観
察できるため、気象庁も平成3年度から映像の提供を受けています。また、火口映像は
学会発表や学術論文などとして公表され、熊本放送のホームページにも利用されています。

さらに、博物館は文部科学省の補助による全国の小・中学校の教室と結んでのイン
ターネットによる出前授業の実施、自然学習や総合的な学習の時間への活用を促すシン
ポジウムを開催するなど、教育・啓蒙活動にも非常に力を入れておられることは、火山
学会会員も良く知るところであります。

平成元年に熊本で開催された火山学会の「火山学のセミナー」においては、火口カメラ
に関する特別の発表も行われ、火口映像とそのシステムの価値の高さが認められました。
また、平成3年には、NHKとヨーロッパ放送連合が共同製作した教育番組「世界の博物館」
では、阿蘇火山博物館が、わが国を代表するユニークな博物館として取り上げられまし
た。これらのことは、貴博物館の優秀性が、国内はもとより世界的なレベルで評価されて
いることの証左であります。

日本火山学会は、阿蘇山の火山活動についての貴重な情報を発信し、また自然科学の
教育活動拠点の一つとして、火山学の進歩ならびに火山防災へ貢献し続けておられる
阿蘇火山博物館が今後も存続することを強く願うものです。

 ここに、貴職の特段のご配慮をお願い申し上げる次第です。

阿蘇火山博物館の存続に向けて