磐梯山について

1.位置と地形

福島県のほぼ中央に位置する猪苗代湖の北約5qにあり(北緯37度36分、東経
140度5分)、東北日本火山帯の火山フロントに沿い、北北東に吾妻山が、ほぼ
東に安達太良山がある。会津若松市から見ると一つのピークのように見えるので、
会津富士といわれる。一方北側から見ると、1888年の小磐梯の噴火による爆裂
火口(カルデラ)があり、南側とはまったく異なる山容を示す。この時に裏磐梯の
湖沼群が形成され、現在福島県を代表する一大リゾート地になっている。

2.地形発達史

(1) ブルカノ式噴火を主とする活動が繰り返さ
れ、安山岩質の厚い溶岩流と火砕岩が累重して、
標高2000b前後の主成層火山が形成された。そ
の課程で浸食や火山体の破壊や新たな火山体の
形成が何回か起こったらしい。
(2) 2.5〜3万年前に、主成層火山体の頂部が南
西に向けて大崩壊し、岩屑流は会津盆地まで達し
た。この時に猪苗代湖が出現したらしい。山頂に
南西開きの馬蹄形カルデラができた。
(3) 大磐梯火山体の成長とともに馬蹄形カルデラの
埋積が進む。北の小磐梯火山体もほぼ平行して成
長したらしい。
(4) 沼ノ平爆裂火口が形成された。
(5) 1888年、小磐梯火山体の噴火、大崩壊、頂部
に北開きの馬蹄形カルデラの形成。北麓に流れ山
を持つ岩屑流の堆積。桧原湖・小野川湖・秋元湖
の3つのせき止め湖が形成された。

 

「磐梯火山の地形発達史」による(金沢大学 守屋以智雄)

3.1888年の噴火

1888(明治21)年7月15日、7時過ぎに軽震があり、7時半過ぎに強い地震があり、
7時45分に小磐梯の山頂部が水蒸気爆発により破裂した。爆発は20回程続き、
最後の一発は北に向けて抜けた。これにより、小磐梯の山体は粉々となり北
に向かって流下した。これが岩屑なだれ(岩なだれ)で、噴火開始直後
に発生している。当日は、快晴で西北西の風であったため、火山灰・火山れ
きは東南東方向に流され、太平洋岸まで達した。
噴出物には新鮮なマグマ物質はなく、やや規模の大きい水蒸気爆発であった
が、磐梯山の噴火が、内外の注目を集めたのは、山体崩壊・疾風(blast)
・岩屑流である。
1888(明治21)年の噴火は、明治以降では日本における最大規模の火山災害で
あった。当時は火山に関する学問はまだ初期の段階であったし、気象台でも
火山観測は実施されていなかった。当然だが、地元に住む人々は誰一人とし
て、磐梯山が噴火することを察知していなかった。しかし、噴火の数日前か
ら、磐梯山周辺に生息する動物たちが、避難行動をとっていたという記録も
残っている。

被害の概要

場所  檜原村 ( 雄子沢 細野 小野川 秋元原 ) [現在の地名 :北塩原村]
      磐瀬村 ( 見祢 渋谷 長坂 ) [現在の地名 : 猪苗代町]
      若宮村 ( 名家 )[現在の地名 : 猪苗代町]
      蚕養村 ( 白木城 小田 )[現在の地名 : 猪苗代町]
      三郷村 ( 伯父ヶ倉 )[現在の地名 : 猪苗代町]

被害地戸数 463戸

埋没破壊戸数 約100戸

被害地人口 2891人

死傷人口 約518人

死亡者  477人

被害総反別 約11032町2反17歩

4.磐梯山に関する文献

[磐梯山・猪苗代の地学](1988年 東京地学協会)
・磐梯山噴火100周年を記念して出版された20の論文集(B5 165p 2000円)

[磐梯火山](1995年 岩屑流発生場に関する研究分科会)
・地下構造と物性 ・地質と岩石 ・地形と水文 ・シュミレーションと監視
 この4テーマで27論文集(A4 241p 非売品)

[磐梯火山と湖の生いたち](1988年 猪苗代盆地団体研究グループ編著)
・磐梯山の火山活動と猪苗代湖や裏磐梯の湖沼群の形成(B6 164p 1050円)

[実録 磐梯山大爆裂百年史](1986年 阿部真典)
当時の警察史などを中心に、被害状況について詳細に記述(A5 238p 1700円)

[裏磐梯自然ハンドブック](1994年 冨田國男編)
裏磐梯の自然を中心に、国立公園の利用方法についても記述(B6 190p 1360円)

[裏磐梯の自然観察](1993年 日本自然保護協会)
裏磐梯の自然の概要とウォーキングマップ(B6 46p 500円)

[磐梯山の自然](1988年 磐梯山噴火記念館編)
磐梯山の火山・植物・動物について詳細に記述(A5 96p 750円)

[磐梯山の怒り1888](1998年 磐梯山噴火記念館編)
10周年企画展図録で、1888年の噴火を中心に、火山災害と防災についても記述(A4 32p 500円)

[磐梯山噴火記念館だより VOL 1 ](1993年 磐梯山噴火記念館編)(A4 16p 非売品)
1.磐梯火山は生きている 2.磐梯山の岩石について 3.磐梯山噴火真図を描いた山本芳翆

[磐梯山噴火記念館だより VOL 2 ](1994年 磐梯山噴火記念館編)(A4 16p 非売品)
1.よく寝る活火山に気を付けよ 2.磐梯山噴火は社会にどのような影響を与えたか 

[磐梯山噴火記念館だより VOL 3 ](1996年 磐梯山噴火記念館編)(A4 16p 非売品)
1.伊豆鳥島火山の大爆発 2.探鳥紀行 裏磐梯デコ平周辺 

[磐梯山噴火](1998年12月 吉川弘文館)(p290 2730円)
明治21年に起こった磐梯山の噴火という災害に対し、人々は江戸時代とは異なった対応を行う。
災害の科学的分析やメディアによる義捐金活動など、災害の科学の時代へと変化していく。

[浄土平・裏磐梯](1998年10月 日本公園美化管理財団)(p48 1050円)
磐梯朝日国立公園の福島県の磐梯吾妻地域を紹介するガイドブック
これは、美しい自然公園シリーズのNO16で、全国の国立公園を紹介している中の1冊


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